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言葉はキャッチボール♥

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ある曇り空の休日、キッチンで何気なく金子みすゞさんの詩集を手にして読み出すと止らなくなり、はっと心に響くものがありました。はじめて彼女の詩集を読んだとき、「きれいな言葉だなあ」が率直な感想でした。そして何度か読み返すと、彼女の繊細な感性に胸を打たれ、すっと身に沁みる言葉と出合うとき、詩人のこころに近い感動を持つ瞬間があります。

金子みすゞさんの文学、みすゞさんの宇宙は「みすゞコスモス」と呼ばれています。このみすゞコスモスは、幼い人から百歳の人まで、その人の人生観、宗教観、宇宙歓の深まりによって、より豊かに、深く読める、日本人が初めて手に入れた文学宇宙だといいます。彼女の詩には、自然とともに生き、小さないのちを慈しむ思い、いのちなきものへの優しいまなざしがあふれています。

「言葉は、ドッジボールではなく、キャッチボールで使うもの」。これまで幾度となく、言葉のドッジボールをしてきたことかと、子どもっぽい自分にはずかしくなりました。「言葉はこだま」。こんな素敵な詩集に出合えたこと、心から感謝したいと思います。

夕顔

お空の星が
夕顔に、
さびしかないの、と
ききました。

お乳のいろの
夕顔は、
さびしかないわ、と
いいました。

お空の星は
それっきり、
すましてキラキラ
ひかります。

さびしくなった
夕顔は、
だんだん下を
むきました。


「さびしかないの」という星の問いかけに「さびしかないわ、」と答えた夕顔をみなさんはどう思いますか。「夕顔」に出合うまでわたしは「さびしくないの」とか、「つらくないの」とたずねて、それを否定されると、なんだか強がって、とか、意地をはって、なんて思っていました。

でもこれは、わたしが゛わたしとあなた゛だったからです。なぜなら「さびしかないの、」という問いかけは、一方的にさびしいに決まっていると決めつけて相手の気持ちをまったく無視した、上から下へのことばだったからです。このように相手を見くだした問い「さびしかないの、」への答えは、「さびしかないわ、」しかないのです。

こんな問いかけをする星だから、「それっきり、すましてキラキラ、ひかります。」なのです。その問いが、「さびしくなった夕顔は、だんだん下を、むきました」と、夕顔のさびしさをかえって深いものにしたことに気づかないのです。

星が夕顔のさびしさに佇むことができたら、「さびしいね」といったことでしょう。そうしたら、夕顔もすなおに「さびしいな」と答えることができたでしょう。そうすれば、友だちにだってなれたでしょう。

言葉は、ドッジボールではなく、キャッチボールで使うものです。うれしいことばがけ、やさしいことばがけは、こだまとなってもどってくるのですから。

金子みすゞさんの「夕顔」を詩集より少し引用させていただきました056.gif
参考文献:「金子みすゞ詩集」(矢崎節夫・荻原昌好)




Photo by Roberto

by piccolo_fiore | 2012-05-16 18:00 | アルベンガ