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カリール・ジブラン

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今、カリール・ジブランの「預言者」という詩集を読んでいます。

カリール・ジブランは、「20世紀のウィリアム・ブレイク」とも称され、宗教・哲学に根ざした、壮大な宇宙的ヴィジョンを謳う詩や絵画を残し、その作風は後世いろいろな詩人や政治家に影響を与えた詩人といわれています。

また、皇太子妃だった当時の皇后美智子様がレバノン大統領から贈られたジブランの詩集「預言者」を愛読し、相談役の神谷美恵子さんにも紹介。精神科医の神谷さんが後に「預言者」の抜粋集を執筆するきっかけにもなったそうです。

皇室に嫁がれた美智子様がストレスで声が出なくなるほど悩み、苦しまれたときに繰り返し、繰り返し読まれたというジブランの詩集。また、マイケル・ジャクソンの愛読書のひとつであり、アメリカでは累計9百万部を超え、すでに30ヶ国語以上に訳され、数十ヶ国以上で2000万人以上の人に読まれています。「聖書の次によく読まれた本」と言われているそうです。

憧れの女性、心の師と仰いでいる方から「預言者」の詩集を贈っていただき、ページをめくるたびにその方を思い、いつも優しく励まされているような気がします。とても感謝の気持ちで満たされます。「預言者」の中の詩はどれもすばらしいですが、今日は「喜びと悲しみについて」をご紹介したいと思います。

喜びと悲しみについて

ひとりの女が言った。お話ください。
喜びと悲しみについて。
アルムスタファは答えて言った。
あなたの喜びは、悲しみの素顔。
笑いのこみあげてくる井戸は、
しばしば涙で溢れています。
そういうことなのです。

悲しみがあなたの存在をえぐれば、
えぐられたところにそれだけ喜びをたくわえることが出来ます。
あなたが葡萄酒を受ける杯は、
まさに陶工のかまどで焼かれたあの杯ではありませんか。
あなたの心を慰める楽器、リュートは、
もとは小刀でくり抜かれたあの木ではありませんか。

嬉しいときには、
自分の心の奥をのぞき込んでごらんなさい。
すると見つけるにちがいありません。
かつては悲しみの原因になっていたものが、
今は喜びの原因となっていることを。

悲しくて仕方のないときも、
心の奥をのぞき込んでごらんなさい。
すると、気づくにちがいありません。
かつては喜びであったことのために、
今は泣いているのだ、と。

あなたがたの誰かが言います。
「喜びは悲しみに勝る」と。
すると或るひとが言います。
「いや、悲しみの方こそ」と。

しかし私は言います。
喜びも悲しみも分けることは出来ません。
両方とも連れそって来て、
一方があなたと食卓についているとき、
忘れてはなりません。
もう一方はあなたの床に眠って待っているのです。

まことにあなたは秤のようです。
悲しみと喜びのあいだに懸かっていて、
空のときにだけ静止し、平衡をたもちます。

宝の持ち主が、
自分の金と銀を量ろうとあなたを持ち上げるとき、
あなたの喜びと悲しみも上がり下がりせざるを得ないのです。


Re:カリール・ジブラン『預言者』(佐久間彪訳)





by piccolo_fiore | 2012-07-26 01:34 |