須賀敦子のヴェネツィア

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Claude Monet
Il canal Grande e la chiesa della Salute a Venezia (1908)

須賀敦子さんの静謐な珠玉エッセイ、『地図のない道』、『時のかけらたち』に収められている小作品「ヴェネツィアの悲しみ」を読んでいると、須賀さんと一緒にヴェネツィアの小さな路地を歩いているような気持ちになります。少し引用いたします・・・





...はじめてヴェネツィアの中心街を歩いたとき、じぶんが「不思議の国のアリス」とおなじくらい小さくなったような気がしたのも、夢のような、という形容につながっている。道を行くにつれて、私は、あらゆるものが手を触れただけで鳴りひびく、とてつもないおもちゃ箱のなかを歩いているような気分にとらわれた...

明かりがついた店の飾り窓が、ふたたび私の目を瞠らせた。ヴェネツィアの人たちが大切にしてきた、オリエントの伝統を思わせる赤みがかった金の装飾品のきらめき。透明であったり不透明であったりする、色とりどりのガラス細工。ブラノをはじめ、島やアドリア海沿岸の村で女たちがいまも編みつづける精巧そのもののレース編み。そのすべてを記録するように、黒ずんだ運河の水面にゆれる数しれない色の明り。寄せてはかえす、小さな波のような女たちのおしゃべり...

あこがれのイタリアへ導いてくれた須賀敦子さんのエッセイに感謝の気持ちをお伝えしたいです。



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by piccolo_fiore | 2012-06-10 17:30 |